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映画『TENET テネット』ネタバレ解説・感想|SFの中にエモエモな友情

クッソ...クリストファー・ノーランのやつ、また俺を虜にしやがって!!(歓喜の涙)

ということで、僕が一番好きな監督、クリストファー・ノーランの最新作『TENET テネット』なる、バケモノスパイSFアクション映画を観てきました。

TENET 作品ポスター

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多くの大作映画が公開先送りになる中、大赤字覚悟で公開に踏み切ってくれた監督と配給に、まずは感謝しないといけませんね。

もちろんIMAX、レーザーで観てきました。

TENET ポスター
IMAXです

とにかくエグいほど面白かった。ネタバレ注意、ということを先に言っておきます。

キャスト俳優陣

『ブラック・クランズマン』で名を挙げた主人公役のジョン・デイビッド・ワシントンがかっこいい。父デンゼル・ワシントン譲りの軽快な演技と、元アメフト選手という経歴を活かした本気のアクションで、観客に映画の世界を追体験させます。

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相棒となるロバート・パティンソンもほんとイケメン。来年公開の新バッドマンに抜擢されてるんですね。ヒロイン、キャット役のエリザベス・デビッキはモデル顔負けの高身長美人。特に目の演技に惹き込まれました。脇を前作『ダンケルク』から続投のケネス・ブラナー、ノーラン柱(?)といってもいいマイケル・ケインが支えます。

エントロピーの逆転が紡ぐ時間逆行劇

そんな俳優陣が演じるのは衝撃の時間逆行劇。時間を遡る、というのはノーランの初期作『メメント』でもやっていたし、他の作品でも擦られまくった題材だが、今回のはリアルタイムで時を遡るので周りが逆再生のように動く。こんな映像表現、実写で観たことないです。これが映像としてとても見応えがあり、IMAXで見るべきアクションの連続でした。いったいどうやって撮影してんのよコレ。

良い作品というのはすべからく、作品世界の中で現実とは異なる嘘は1つだけにするのが鉄則ですが、本作でついている嘘は「エントロピーを逆転、すなわち減少させたとき、その物体の時間が逆転する」ということです。物理学の世界ではエントロピーは増大する、というのが自然なのですが、この世界ではそうした自然の摂理に反した、エントロピーが減少するものが登場します。それが逆行弾だったり回転ドアを通った人たち、ということなんですね。

本作ではそれ以外、一切の物理法則は通常のまま。たとえば重力はそのまま下向きにかかっているし、時間の流れも過去から未来へ、というのは変わらない。逆行したとしても、常に時間は過去から未来へという一方通行で流れ続けるわけです。

逆行へといざなう回転ドア

時間を反転させるシステムとして、片方から入り、もう片方から出られる回転ドアが複数登場しました。このドアを通り抜けると、時間を逆行できるというドラえもんもびっくりの道具です。このシステムが一番「なるほど、、!」と思いました。例えばこれが一瞬で逆行できるものだったとすると、逆行時の自分と重なり対消滅が起こってしまうんですよね(なるほどオタク)。だからこそ、少なくとも人1人分の間隔を空けておくことが重要、ここでもソーシャルディスタンス大事だよ、ということです。

それから、順行の時間軸から回転ドアに入り逆行の時間軸に入ると、第三者からはその時点から先の未来にその人がいない、すなわち消滅したように見えます。逆に、逆行の時間軸から順行の時間軸に戻ると、その時点で急に2人の人物が新たに生成したように見えます。これがオスロのフリーポート内でフルマスクの黒服男が急に2人現れたメカニズムなんですね(なるほどオタク)。

アルゴリズムって何なん?

アルゴリズムの起動を阻止する、というのが大目的だったわけですが、アルゴリズムって難しくないですか?ずっと「何なんソレ?」と思いながら鑑賞していました。

この世界ではそもそも、地球の滅亡が決まっていて、未来人は回転ドアを使い時間を逆行することによって現代に生活を移そうとします。しかしそれでは現代人と衝突が生まれるのは畢竟。未来人と現代人が生活をかけて争うのが「第三次世界大戦」と作中で言われるものです。

しかし、時間を逆行できるとはいえ、物理法則が逆転した世界では時間を逆行する現代人のほうが有利です。そこで、「アルゴリズム」を使うことでエントロピーが減少する世界を規定世界にすることで、逆行を順行に変える。そうして未来人が第三次世界大戦を制し、地球の覇権を握ろうとしている。これが「アルゴリズム」の役割なんですね(なるほどオタク)。怖い怖い。

SFの中に詰まるヒューマンドラマが良いのよ

ストーリーについて語りたいのですが、初見でさすがに逆行するのは分かってたので、フリーポートの廊下で戦ったフルマスクの男は未来の自分なんだろうな、という予想こそ付いたのですが、ほかの伏線には全く気づかず楽しむことが出来ました。どう繋がってるんだ?と思うところもあるのでまた2回目を見たりして確かめたいです。特に時間逆行カーチェイスのシーンね。入り乱れすぎ。正直分からん。

そんなバリSFアクションの中で、今回の『TENET』で一番良かったのは主人公と相棒ニールのエモエモな友情。主人公とニールの最後の会話、最高すぎ。鳥肌立ちまくり。「君にとっては数年後、俺にとっては数年前」なんてセリフに俺は弱い。なんなの。エモすぎん?『インセプション』しかり、『インターステラー』しかり、SFを描きながらもしっかり人間ドラマになってるのがノーラン映画の素晴らしいところなんよ。コレコレ。

なんでしょうね、ダイエットコークや五円玉のようなストラップといったすべての伏線が、この友情に結びつくというカタルシスが素晴らしいんですよね。表現するなら「時空を超えた友情」いや、「時間を交えた友情」といった方が適切でしょうか。

あとはキャットが息子に捧げる愛情だったり、セイターとの切りたくても切れない関係だったりも胸が締め付けられる思いがしましたね。息子に会えるように、恐怖で支配されるセイターとの関係を続けなければならないのですからね、切ない。

IMAXで見るべき映像と音響

ともかく映像美はすごい。とにかくIMAXで見ようこれは。ほとんどのシーンがIMAXで撮られてて、次は全編IMAXになるんじゃね?という勢い。ただ意外とそのおかげでシネスコ画角に戻るシーンが「これはシネマなんだ」という雰囲気の演出になってて、スタルスク12の荒野のシーンなんかは綺麗でした。

なんと言っても空港での飛行機の大爆発シーンは気持ち良いほど迫力がありました。「飛行機の大きさは?」「ここは派手に行こう」なんていう会話が観客に向けられたメタ的なセリフのように感じられて草。あざすあざす。

あと音。低音がIMAXでバリ響いてたし、音楽が最高。今回の作曲はハンス・ジマーじゃないんだけど、センスを感じました。特に時間を逆行するときの音楽が、耳の閉塞感(気圧が低くなったときのアレ)を感じさせる音になってて世界観に没入しやすいようになってて最高でした。

まとめ

いやぁ、久々にノーラン映画でシビれました。最後になるけどマイケル・ケインブルックスブラザーズのスーツをサゲる台詞言ってたのもユーモラスで笑いました。