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映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』感想|ストーリーを犠牲にパロディーネタで攻めた

前作『シュガー・ラッシュ』の公開から5年。ディズニーがまたパロディー満載映画を作ってきました。

シュガー・ラッシュ:オンライン
©2018 Disney.

あらすじ

人間たちが知らないゲームの裏側の世界を舞台に、アーケードゲームのキャラクターである悪役ラルフと少女ヴァネロペの冒険と友情を描いたディズニーアニメ「シュガー・ラッシュ」の続編。好奇心旺盛なレーサーでプリンセスのヴァネロペと、心優しい悪役キャラクターのラルフは大親友。ある日、ヴァネロペが暮らすアーケードゲームシュガー・ラッシュ」が故障し、廃棄処分の危機に陥ってしまう。シュガー・ラッシュを救うべくゲームの世界から飛び出した2人は、刺激的だけど恐ろしい危険も潜むインターネットの世界に足を踏み入れるが……。アナとエルサ、シンデレラ、白雪姫らディズニー作品やピクサー作品のプリンセスたちをはじめ、多数のディズニーキャラクターが登場する。前作も手がけた「ズートピア」のリッチ・ムーアと、両作で脚本家としてコンビを組んだフィル・ジョンストンが共同で監督を務めた。(映画.com)

感想

検索が擬人化するとあそこまで前のめりになるのか…。

あのディズニーが、ここまでやるかというほどのパロディー満載なネタが豊富であり、ストーリーはそっちのけで現代っ子が楽しめる作品になっていました。

どっちかっていうとネタ重視ですね。インターネットの世界観をいかに擬人化して描くか?というところに今回のスタッフたちは興味を持って作ったんだと思います。もちろんラルフとヴァネロペの友情の成長、という感動を誘うストーリーラインはあるのですが、こちらは後で述べるように、アラが目立つものでした。

インターネットを描く

僕がインターネットに触れ始めたのは、小学5年生くらいのときだった気がします。社会科の授業で調べ物学習をするというので、当時はWindowsInternet Explorerから「Yahoo! きっず」のページを開き、思い思いの検索ワードを入力していったことを覚えています。

時は流れ、検索のサイトはGoogleに取って代わられ、さまざまなユーザビリティの高いネットサービスがオープンしていきました。AmazonTwitterYoutubeInstagram…。今や子供を含めた誰もが知っているサービスが、この作品の中では数多く登場します。

wifiルーターに入ったラルフとヴァネロペは、個別のIPアドレスを割り当てられ、ビルが乱立する都会とも思えるようなデザインのインターネットの世界に入っていきます。ここの世界観構築はさすがディズニーといったところ。さまざまな企業の実際のロゴが、ひしめく建物にあしらってあり、驚きました。同じスタッフが手がけた『ズートピア』の世界観構築も、細部までこだわっていて凄かったですし、このスタッフ陣は素晴らしいなと再実感。背景美術が美しいアニメ作品は、高確率で良い作品が多い。

ただ、その後の展開では少し考えてもらいたかったな、と。2人はオークションサイト「eBay」を使って、壊れたハンドルを購入する流れになります。この「eBay」、日本ではほとんど馴染みがないと思います。まあ言ってみれば「ヤフオク!」と同じようなサービスですね。

僕はたまたま知っていたので、実際に存在するサービスがここまで大々的に取り上げられるなんて、ディズニー余裕あるなとか思って観てましたが、ほかのひと、特に子供には響かなかったのでは?世界中の子供たちに楽しさと夢を届けることがディズニーの役目なのだとしたら、ここでアメリカ本国でしか使われていないサービスを全面的に押し出すのはいかがなものかと思いました。

それから、インターネットの世界をアニメーションで描くというのは、特に新しいものではありません。細田守監督の『デジタルモンスター ぼくらのウォーゲーム!』や『サマーウォーズ』なんかはその典型です。世界的に公開されるディズニー映画で、有名企業の名前をバンバン出す、というところにオリジナリティがあるわけです。

ディズニーキャラパロディー

どれぐらいの数のディズニーキャラが登場していたのでしょう?『シュガー・ラッシュ』1作目も、ゲームキャラがたくさん出てきてすげぇなと思った記憶がありますが、やはりこのシュガー・ラッシュというコンテンツは他のキャラを平然と登場させることができる点で、強いですね。見ていて楽しいですから。

プリンセスだけでも、白雪姫、シンデレラ、オーロラ姫、アリエル、ベル、ジャスミンポカホンタス、ティアナ、メリダ、アナ&エルサ、モアナ。他のディズニー作品のキャラも登場してました。『スターウォーズ』のストームトルーパーやC3PO、『トイ・ストーリー』のバズ・ライトイヤー、『ズートピア』のニック、などなど。

僕は吹き替え版で見たんですが、これらほとんどを元の吹き替え声優が演じているのにも驚きました。松たか子(エルサ)に所ジョージ(バズ)がこのためだけに呼ばれたことを想像するに、ディズニーめっちゃ金かけてんなーと思わざるにはいられませんでした。

ヴァネロペがプリンセスたちと戯れるシーンは好きですね。あんなにフランクな姿のプリンセスたちを拝むと、やっぱりニヤケてしまう。ディズニープリンセスにスポットライトが当たっていきなり歌い出すこともネタになってました。実際、ヴァネロペも歌い出すんですが、それが映画『ラ・ラ・ランド』の冒頭の高速道路で歌い出すシーンに酷似してたんで、これもパロディーなんでしょう。

ストーリーには文句を言いたい

さて問題のストーリー。本作ではヴァネロペが「予想もつかないような新しいことを毎日経験したい」という思いから、リアル志向のカーレース・ネットゲームの世界で生きていくことを決める。そのためにラルフたちのいたゲームセンターからは距離を置くこととなり、必然的にラルフともお別れせざるを得なくなるのです。ラルフは親友と離れたくない思いから途中こそ反対していましたが、終盤でヴァネロペを応援することに決め、シャンクのいるレースゲームへ送り出し、物語はラストを迎えます。

いやしかし、ヴァネロペがあの荒廃した街中を駆けるリアルレースゲームの世界に身を置くというのは、さすがに合ってなさすぎると思いました。あの可愛いキャラと街中の描写が全くといっていいほどマッチしていないのです。あそこでの生活がイメージできない。そりゃラルフも反対するわ、と。

何か刺激を求めたい、というヴァネロペの願いを叶えるために、このリアルネトゲというプラットフォームを用意してそこに落とし込んでいく必要はあったのか?僕は別の、身の丈に合った描き方があったように思います。

さらに、ラルフとヴァネロペの別離を描くことで、親友の自立を応援する、というテーマ・メッセージをディズニーが伝えたかったとしましょう。それだったとしても、やはりこのプロットじゃなくても良かったんじゃないかと思えてなりません。

こんなこと言っちゃアレですが、本作の用意したメッセージを伝える上で、インターネットの世界を描く必要もないですし、あのゲームセンターのアーケードの中で刺激を求めることや自立を描くことは出来たんじゃないかと思います。それこそ最初のシーンでラルフがコースを新しくしようと奮闘していたように。

これもこんなこと言っちゃアレなんですが、ディズニーのアニメーションに、後世の子供たちにも夢を与えるという使命があるのだとしたら、「今の」ネットサービスが多く登場する本作品は、未来からしてみればやや古臭さが残る作品になってしまうんじゃないかと懸念があります。後世まで廃れず残っている作品というのは、今見ても古臭さを感じないものです。まあディズニー自身が、今の時代に合わせたシニカルな作品を製作しようという変革の流れがあるんでしょうかね。『アナ雪』しかり、『ズートピア』しかり。今後に期待します。

まとめ

さて、いろいろ言ってきましたが、年末のクリスマスシーズンに楽しめた作品であることは間違いないです。ディズニーにはすごい余裕を感じるし、『シュガー・ラッシュ』というコンテンツの優位性を最大限に活かしたパロディーネタに満足しました。ラスト付近のアレは気持ち悪かったですが、まあ許容範囲でしょう。本作からではなく『シュガー・ラッシュ』の1作目をとにかく見てほしいです。

映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」の感想 #シュガラお題



sponsored by 映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」(12月21日公開)