あーてぃちょーくのおんせんブログ

映画『1917 命をかけた伝令』感想|ワンカット映像はすごいが予想通りすぎた

良くも悪くも期待通りの映画だった。

監督サム・メンデスの祖父の実体験をもとに、第一次世界大戦中の2人の兵士が決死の伝令任務に挑む姿をワンカット風の映像で描く。

1917

予告を見て面白そうだと思い鑑賞。全編ワンカットで戦争中に伝令の任務、という触れ込みを聞くと、なるほど、危ない戦争地帯をメタルギアのように隠れながら駆け回り、仲間を失いながらも、主人公は無事その伝令を伝え、任務を終えるのだろうな、ワンカットだしさぞかし緊迫感が出て良いだろうな、そんなことを期待・予想した。

ほんとにその通りだった。それ以上でも以下でもない。まんまなのである。

これが観たかったんだけど、なんというかもうすこし味付けというか、予想を超える何かが欲しかった。

いいんですよ、全編ワンカットに見える映像技術とか、リアルな戦争描写とか、全てをロケでやってることとか。本気で戦争アクションをワンカットで撮ろうという気概が感じられて。

でもぐっと惹きつけられるものがないんだよな。実話からインスピレーションを受けた戦争ものだからストーリーの改良が難しいのは分かる。分かるのだが、あまりにアッサリしていて、後に残らないのよね。ドキドキはするけど余韻はない。お化け屋敷みたいな。

映像技術はすごい。最新のVFXによって繋ぎ目が分からないようにワンカットに見えるよう編集しているそうだ。全部外ロケでこんなにやるのは初めてじゃないかな?

監督サム・メンデスは『007 スペクター』の冒頭でスペインの死者の日の長回しが記憶に新しい。本作でアカデミー撮影賞を受賞した撮影監督のロジャー・ディーキンスは長年質の良いハリウッド映画を撮り続けており(最近だと『ボーダーライン』『ブレードランナー2049』)、『スペクター』や『007 スカイフォール』でもメンデスとタッグを組んでいる。

artichoke.hatenablog.com

artichoke.hatenablog.com

さて、本作同様ワンカットが有名なのは『バードマン』だが、こちらはアカデミー賞を受賞しただけあって、ワンカットの撮影のみならず、ストーリーのテーマも考えさせられるもので良かった。

関係ないけど邦画のワンカットも『カメラを止めるな!』で話題になったし、三谷幸喜が撮った『大空港2013』も個人的には好き。

戦争ものではシーンの長回しが臨場感を生むのでよく使われるのだが、印象的なのは名作『プライベートライアン』の海辺のシーンや僕の好きなクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』だろう。これらは作品のスパイス的要素として長回しのシーンを入れ、ピリリとした緊迫感を加えることに成功していた。

本作はそれに終始してしまい、肝心なメッセージとか監督の伝えたい意図が軽薄になっていた。夜中のシーンを見てるときに、まるで舞台を見ているようだと感じた。そこでリアルタイムに行なわれる演技を観客として見ている感じ。舞台的効果を映画にそのまま持ってきてもそれだけではダメなんだなということが分かった。

戦争映画は名作のインフレで、これを見るなら他のを見たほうがいい。『ブラックホークダウン』『プライベートライアン』あたりがこれと近い系譜かな。

映画館で1回見る分には楽しめる、そんな映画ですね。