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映画『聲の形』感想|京アニの粋を集めて原作の良さを抽出

大今良時先生による原作がもう素晴らしくて、観たいと思っていた映画版をようやく鑑賞できました。一言で言えば、マスト・ウォッチな作品でした。

聲の形

非常に丁寧な作画でパステル風の綺麗な色使いが作品の空気感とマッチしていて、それだけで素晴らしいなと思った。これぞ京アニクオリティーですね。

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原作の良いところを解釈し、無理なく2時間にまとめていて、伝えたいメッセージも全く変わっていない。人って面倒くさい、それでも繋がっていたいものだよね、というメッセージがよく伝わるものになっていた。(最近だとアニメ『さらざんまい』が同じメッセージをテーマにしてたな。)

けっこう面倒くさい人たちが出てくるんですよね、『聲の形』って。植野は関係こじらさたその筆頭だし、佐原もうまく距離感が掴めない。川合さんもそれこそ潜在的に自分が可愛いと思ってしまっているし。主人公の将也も贖罪の気持ちがみんなを一度は傷つけてしまう。西宮も良かれと思ってやったことや自身の遠慮が結果的に独りよがりで関係を悪化させてしまう。

みんなもどれかには当てはまる経験があるのではないだろうか。僕も自分の経験と重なる部分があり、割と辛い思いになるシーンもある。作品が提示するのは、それらは意外と乗り越えられる、人は面倒くさいけど、その面倒くささがむしろ、人を前に動かすんだというメッセージである。

キャラで言うと結弦が可愛い。姉ちゃん思いで優しい。あと可愛い。おばあちゃん思いだし最後は母親思いにもなる。それに可愛い。

京都アニメーションではお馴染みの監督・山田尚子、脚本・吉田玲子コンビで、安定の演出。前を向けない将也の視線は足元を映すカットで表現し、ラストではこれでもかと周囲の人間の表情を映し、周りの人たちとの関係にポジティブになれたことを表現。

驚いたのはオープニングの演出。イギリスのロックバンドTHE WHOの曲で小学生の頃の将也の様子を映していく。この曲によって当時の将也の無敵感や人間関係、けだるさまでをも表現できているように感じた。

惜しむらくは本作でキャラデザと総作監を務めた西屋太志さんが昨年の京アニ放火で亡くなってしまったこと。『日常』や『ユーフォニアム』シリーズでもキャラデザをされており、可愛げがあり愛らしいキャラクターが好きだったので非常に残念。本作でも原作の絵から離れすぎず、優しい感じのキャラクターでよかった。

変にお涙頂戴になってない演出だが、ぐっとくるシーンもある。バランスがすごくよい映画だと思う。