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映画『パラサイト 半地下の家族』感想|匂いの演出、親北ギャグ、トイレの蓋

遅ればせながらですが。カンヌとアカデミー賞のダブル受賞を果たした、ポン・ジュノ監督の意欲作。

ブラックユーモア溢れる風刺の効いた映画で、所々笑えました。一方で、後半からは展開が二転三転する緊張の連続。

パラサイト

貧富の格差を、住む場所の高低(丘の上の高級住宅と、半地下の安アパート)によって、これでもかと視覚に訴える絵作りが素晴らしかった。初めてパク家を訪れるとき、ギウは坂道を上へ、上へと登っていく。パク家から土砂降りの中を3人が逃げ帰るとき、階段を降り高架下をくぐり、泥水が流れゆく半地下へと下る。こういう分かりやすい絵作りが世界での評価を高めたんだろう。

父親役を演じたソンガンホの演技力もまた引き込まれるものがあった。表情1つで芝居するとはこのこと。また、画面からは絶対に伝わってこないはずの「匂い」を観客があたかも錯覚する、その演出も群を抜いていたように思う。

ユーモアを忘れない脚本も好きなのだが、中でもあの親北ギャグは面白かった。お気に入りのシーン。(韓国ではああいうギャグは受け入れられてるの?)

メタファーを多く盛り込んでいるようだが、自分が印象的だったのは、溢れるトイレの水を抑えるように便器の上に座り、スンとした表情でタバコを吹かすギジョン。このシーンは非常に秀逸だったと思う。起きた出来事への整理がつかず、渾々と溢れる感情に、まさしく蓋をして押さえ込んでいるように見えたからだ。

中盤のテンポ感が遅く、中だるみしているようにも感じたが、総じて楽しむことができた。『万引き家族』といい、カンヌはこういうのが好きなんだな。