あーてぃちょーくのおんせんブログ

映画『劇場版SHIROBAKO』感想|夢の途上にいる若者へのメッセージ

面白かったし、最後は少し泣けた。

劇場版SHIROBAKO

あれから4年。アニメ制作会社「武蔵野アニメーション」は下火となっていたが、新たに劇場アニメを作ることで制作プロデューサーを務める主人公・宮森(みゃーもり)たちが再び夢を追いかけようとする。

SHIROBAKO』のアニメ版は、アニメ業界では珍しく「働く大人」をフィーチャーしており、 しかも「夢を叶える」というストーリーではなく、「夢を追う」という駆け出しの新人の葛藤や苦悩、泥臭い努力を描いた、“新しい”感覚のアニメだったと思う。

アニメ版は実際にアニメスタジオの多い武蔵境を舞台にし、実在するアニメ監督や有名なスタッフをキャラクターのモデルにしたり、業界のあるあるネタを積極的に取り込むことで、「リアル」な側面を打ち出していた。

一転、この劇場版では「ファンタジー」な表現にあふれていた。主人公・宮森の妄想ミュージカル、急に始まる時代劇的演出、そして劇中劇のラストシーンを徹底的に描き切ったのにもファンタジーを感じた。

この、ファンタジーのときの絵がガンガンに動いていて、見ていて楽しかった。

もちろん狙ってやっていることなのでそりゃ楽しいに決まっているが、スクリーン映えを意識してリアルな日常描写を抑え、ケレン味たっぷりのアクションやメカ表現を加えることで、武蔵野アニメーション、ひいてはこれを実際に作っているP.A.WORKSのこだわりがメタ的に感じられて良かった。

また、こうしたドンちゃん騒ぎを入れることで物語がダレることなく、時の流れを適度に端折ることにも成功していた。

あと木下監督のお決まりのギャグシーンは冴え渡りすぎていて、めちゃめちゃ笑ったし、観客からも笑いが起きていた。さすがっす。

終盤、劇場アニメを無事完成させた宮森たちは少しだけ成長する。ただ、彼女たちはまだ夢の途上で、本当にやりたかったこと、夢を叶えるにはまだ程遠い。

我々若者たちへの力強いメッセージ。何がなんでも諦めず、泥臭くても前を見て、恥ずかしがらずに周りの力を借りながら、やりたい事へ、一歩一歩、近づいていくしかない。そう思った。思わせるだけの力がラストにあった。