あーてぃちょーくのおんせんブログ

アニメ『少女革命ウテナ』監督と主演2人の赤裸々インタビュー【Complete Blu-ray BOX】

幾原邦彦監督による、伝説のアニメ『少女革命ウテナ』。

artichoke.hatenablog.com

2017年にはその放送開始から20周年を記念して豪華なBlu-ray Boxが発売されました。

少女革命ウテナ Complete Blu-ray Box

今回は、この『少女革命ウテナ Complete Blu-ray BOX』の特典DISCに収録されている、監督:幾原邦彦、天上ウテナ役:川上とも子、姫宮アンシー役:洲崎ゆり子の3人のインタビューを文字起こししてみたので、当時の状況や監督の意図を探る手がかりにしてみてはいかがでしょう。

インタビュー(1997)

幾原邦彦少女革命ウテナを語る」

ウテナはやっぱり僕がなりたい人なんですね。馬鹿になりたいと。無知になりたい、無邪気になりたい。」

「アンシーってのは、やっぱり僕にとって現実の体現なんだろうね。モチベーションは言えないよね、まあちょっとヒントを言うと、それは楽しいことだよね。アンシーというキャラクター、キャラクターそのものに、実際毒があるかなんてのは僕は知らないし、毒があるかのように見えるという表現はしてるんだけど、そこに悪意があるかどうかっていうことまでは一切表現しないつもりだから。自分で言うのもなんだけど、このキャラクターは珍しいからね、多分アニメーションではかつてないくらいいなかったキャラではないのかっていう気がするけどね。」

「シーザーさんの合唱曲っていうのは僕はやっぱりティーンエージャーのころから『天井桟敷』(1996年)なんかでかかっていた曲だから僕は好きだったんだけど、やっぱり僕に言わせると驚くみんなのリアクションの方が不思議なんだよね。人によってはギャグなのかと思って笑っちゃいましたと言うひともいたんだよね。そのことの意味って何なんだろうと色々思ったんだけど、僕の感性のなかでは割と当たり前だったんだけど、やっぱり日本語でしかも化石化してるとも言えるような日本語の羅列でその部分を笑ったんだと思うんだけど。つまり合唱だとふつうこうじゃないだろうっていう固定観念があったと思うんだけど、そういうものにプラス僕たちがもう日本語を嫌いなんじゃないかと思ったんだよね。」

「1話とか2話は割と親切に作ってるつもりなんだよね。新しい面白さの価値を発見したいみたいなことは言ったんだけど、1話とか2話はそれでも親切には作ってると思うんだよね。まだ最大公約数的に、誰が見てもわかるようには作ってあるつもりなんだよね。いやすでに1話2話でもうワケが分からんってずいぶん言われたんだけど、それでも僕にしてみるともう最大限にサービスしたつもりだったんだよね。もうコレ以上はサービスできませんっていうくらいサービスしたんでそれを世間が望んでるかどうか知らないんだけど、今後ますますそういう、1話とか2話的なムードからは離れていくのではないのかなと思うんだけどね。」

「単純に面白いと言われるような作品だけを作りたいわけではないんだよね。もちろん、面白いっていうのはそれなりに世間のリアクションがあったということだから、そういう評価はありがたいんだけど、それよりはやっぱり、まあ修行僧みたいな価値だって言われるかもしれないんだけど、面白さの価値そのものも突き詰めたいって思ってるんだよね。」

「大勢のスタッフで作ってる作品だから、これって面白いでしょっていう価値をキャッチボールしてる間に、何が面白いんだという。言葉をキャッチボールするときに、やっぱりかつて見たハリウッド映画的なものであるとか、かつて僕らが10代の頃に見たアニメーションの情報であるとか、かつて僕たちが面白いと思ったマンガであるとか、そういう、A君も知っててB君も知っててC君も知っててっていう共通の言語で面白いっていうことを煮詰めていくと、やっぱり気がつくとさっきの話に戻るけど、パロディになっていくんだよね。模倣になっていくんだよね。で、極力僕はそういう模倣からは避けたいって思ったんだよね。」

キャラクターそれぞれが僕の分身なんじゃないのかなって気がするけどね。影絵少女は僕の友達です(笑)。カシラ星から来た女の子たちなんですよ。それで割とよく僕に話しかけてくるんですけど、電波で普段から。」

「やっぱり僕らの世代って、僕らより下の世代もそうなんだろうけど、想像力が欠けてると思うんだよね。よく学生なんかで自殺しちゃう子が多いじゃない。楽しい未来っていうのが想像できないと思うんだよね。もっとひどい言い方しちゃうと、本来未来のモチベーションになるべきお父さんお母さんの姿を見てても、楽しそうな大人になるんだ、楽しい大人になるっていうことが想像できないと思うんだよね。接する大人っていうのがお父さんお母さん学校の先生であったりするわけじゃない。そういうのを見てても未来が楽しいと思えないっていうのかな。それは別にお父さんお母さんのせいじゃなくって想像力の欠如だと思うんだけど。どっちかって言うと僕もそうなんだけど、あるいは視聴者に対してうまく表現できるか分からないんだけど、このようにやっていけば楽しく未来を想像できるんじゃないのかっていうのを、このように生きていけば楽しく生きていけるのではではないか、ということを表現できたらな、と思ってるんだけど。」

「うまく言えばだからこそウテナってのは、無知でバカじゃない(ですか)。王子様がとか言っているじゃない、いい歳して。それをバカだと思えてしまう僕たちの感性っていうのかな、そのことをバカだと思ってる僕たちの感性そのものがくだらないと思えるように導きたいと思ってるっていうのかな。」

川上とも子ウテナとの出会い」

「私がウテナと出会ったのはオーディション会場でした。」

ウテナのお話は普通の少女マンガのお話で、ウテナもいわゆるふつうの髪の毛の長いかわいい女の子なんだろうと思って、その自分の思ったまんまに演じてしまったら、実はそのウテナは自分をボクと呼んでるし、宝塚のような感じの少年っぽいとてもボーイッシュな女の子だっていうのを、終わったあとに聞かされて、「え〜、もうだめ、これは絶対落ちちゃった、私は違う風にやっちゃったわ」と思ってたら、じゃあ川上さんウテナ役に決まったのでよろしくって言われて、え!いいのかな?ほんとにわたしでいいのかな?と思って。でもとりあえず決まったから頑張らなくちゃと思って。」

「で、どうやって役作りをしようかなって思ったときに、幾原監督とお会いして、ウテナはどうでしょう?と言って。できればそのオーディションのときに私がどうも1人だけ違うことをやったと思うのでそれを聞かせて頂けませんか?って言って。いいよって言って、Be Papasさんに聞かせていただいて。ほんとに私1人だけ全然もう、この人お人好しなのねっていうウテナになってしまっていて、でもきっとそれが良かったのかなって思って。他のみなさんがやられていたすごいカッコいいウテナの少年の(ような)みんなに憧れられちゃうような、すごいカッコいいウテナも実は聴いて、これはお人好しの部分とカッコイイ部分をうまい具合にミックスできたら、私なりのウテナになるんじゃないかなと思って、今までなんとか頑張って色々頭を悩ませて考えてウテナを演じてきたんですが。」

ウテナも物語のなかで運命っていうものに流されていて。でもそれにウテナは負けないように一生懸命立ち向かっていってるのがすごく私は素敵だなって思います。」

「この先ウテナのお話がどうなっていっちゃうのか、また、ウテナやアンシーやその他の登場人物の人たちがどんな風になっていくのか、みんなそれぞれ役の人たち、人物はウテナのストーリーを通してみんな一人ひとりがすごく成長していっているので、そういうところも見てもらって、みなさんの元気につながってくれるといいなって思っています。」

洲崎ゆり子「アンシーと私」

「私とアンシーの出会いっていうのが、ホントは私オーディション要員に入ってなかったんですね。それで、東映のスタジオにいたら、「洲崎いるのか、お前じゃあ時間あるんなら受けてけば」「あ。ありがとうございます」みたいな感じでそれで初めてウテナとアンシーを見せて頂いたんですけど。」

「ご存知の方はご存知だと思うんですが、私ってほら、だいたい2等身キャラばっかりじゃないですか。どうなんだろう、私には厳しいのかなと思いながら、ただでもウテナも受けさせてもらったんですが、アンシーの見た目の不思議さと台詞回しとかで、素直に演じてみればいいのかなみたいのがありまして。すごくやらせて頂けたらうれしいなっていうのが最初からあったので、その役を頂いたときに、ほんとに嬉しくて、頑張んなきゃ!って思って現場行ったんです。」

「1話目終わりまして、監督のところにテケテケテケって(行って)、ドキドキ(しながら)「監督!どうでしたか?私のアンシー。」って伺ったらですね、「洲崎さん、その無理めなところがこの作品にはgoodですよ。」って言われて。「ありがとうございます」って言ってもうそのままどう受け取ったら良いのかなって思いながら、「うん、きっとこのままゴーって感じなのね」っていう感じで喜んで帰ってきちゃったんですけども。」

「アンシーの魅力って、あの子ほら、一見おとなしめじゃないですか。メガネかけて、静かに薔薇を育ててるような感じのところがあるんですけれども。彼女の不思議な存在っていうか、そういうものは皆さんもよくご存知だと思うんですけれども、私ね、女としてああいうタイプって一番怖いんじゃないかなって思うんです。割とどっちかっていうとおとなしめ、地味めな感じしながらも、周りの人をどんどん巻き込んでいくあの力。だから例えば、私に恋人ができたときに、絶対に友達だけど会わせたくないタイプっていうか。彼が彼女のことを好きになっちゃうんじゃないかなって思うタイプなんですよね。」

ウテナの番組自身もこれからもどんどん色んな展開が出てくると思います。 いまもデュエリストがどんどん増えていってカッコいい美形キャラもいっぱい出てきて、お兄さんとの関係もとっても気になるし、ということで。みなさんと一緒に私もこれからも楽しみにしていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。ということで最後に「絶対運命黙示録☆」」

まとめ

1997年の放送公開当時のインタビューなので、生々しい現場の声というのがひしひしと伝わってきます。幾原監督のインタビューを初めて聞きましたが、やはりどこかシニカルで哲学的めいたことろがあって、こういうクリエイティビティーのもとに、名作は生まれるんだなと改めて思いました。