【祝ノーベル賞】本庶先生の講演からPD-1抗体発見の歴史と若き日のイケメン写真

昨日、ノーベル生理学・医学賞が発表され、日本人の本庶佑(ほんじょ・たすく)先生、アメリカのJames Patrick Allison氏の2名が受賞しました。

ちょうど去年の学会で、本庶先生の講演を聞けて非常にラッキーでした。僕のような生物学研究をやっている身からすれば、生物の基礎研究を臨床現場まで応用した点で、生物学研究の夢が広がるようなお手本のような研究者だと思います。

講演のときの座長が近藤茂先生大阪大学)で、10年間本庶先生のラボにいたときのエピソードを交えつつ本庶先生を紹介していました。本題とはズレますが、そのときに印象に残ったのがコレ。

若かりし頃の本庶先生。美男ですねぇ。そしてこれをノーベル賞受賞のニュースがあった日の夜に投稿する近藤先生も、なかなかのユーモアを感じます。

講演を聞いたときのメモが残っているので、それを参考にしつつ、PD-1抗体がどのように開発されたか、かいつまんで説明したいと思います。

当時の考え

そもそも、がん細胞を免疫の力で攻撃させてやる、という考え方は昔からあったようです。しかし、その多くは失敗に終わってきました。というのも、免疫細胞を活性化する、すなわち「アクセルを踏む」というやり方では極めて限定的な効果しか見られませんでした。

新しい考え

そこで、本庶先生やJames Allison教授らは、免疫細胞の抑制をブロックする、すなわち「ブレーキを外す」というやり方を取ることにしました。ブレーキとなっていたのは、PD-1やCTLA4といった免疫細胞の表面にある受容体です。

PD-1の発見と機能解析

本庶先生はPD-1を発見すると、そのノックアウト(機能不全)マウスを作成し、機能を調べようとしました。PD-1のノックアウトマウス自体はたった1年で出来たそうなんですが、どうも表現型が出ない。そこでより綺麗なマウス系統にするのにさらに数年かかったそうです。

このノックアウトマウスを解析すると、慢性的な免疫疾患を呈していました。免疫疾患、ということは、このマウスではマイルドながら異常に免疫が活性化してしまっているということです。つまり、いつもはPD-1が免疫細胞にマイルドなブレーキをかける役割を担っていることが分かったのです(PD-1の機能解明)。

がん免疫療法w:400

PD-1抗体をがん治療薬へ

本庶先生がすごいのは、この発見を単なる免疫学の新たな知見とするだけでなく、がん治療に応用できないか、と考えたところです。実際に、PD-1を抑制するPD-1抗体を投与するとがんの腫瘍体積が減少していました。

この発見がニボルマブ(商品名オプジーボ)の開発に繋がりました。患者によりますが、PD-1の抑制で腫瘍が小さくなった患者は、治療を止めてもがんが小さいままという報告もあります。

なぜ長期に渡る治療効果が見られるのでしょうか。通常の治療では、抗がん剤の複数回の使用でがん細胞が薬に対して抵抗性を獲得してしまいます。一方、PD-1抗体を使った治療では、患者自身の免疫細胞を使っています。免疫細胞はそもそも様々な病原に対処できるよう、多様性に対してカバーできるようになっています。だからこそ、がん細胞の性質が多少変化しても、カバーできるのですね。

オプジーボの利点と改善点

オプジーボには以下の利点と改善点があり、今後薬としてさらに発展できる余地があると言えます。

利点

1. 正常細胞に影響しない(副作用が少ない 注:副作用はゼロではありません)

2. すべての癌の種類に効く可能性がある

3. がんの変異を全て認識する

改善点

1. がん患者全員に効くわけではない

2. では、効く人のマーカーは何なのか?

本庶先生の他の仕事

本庶先生はPD-1に関する研究のみならず、「免疫グロブリン遺伝子と、クラススイッチ組み換えに関する研究」や「Notch受容体の核内標的分子であるRBP-Jによる細胞分化制御に関する研究」「IL-2レセプターα鎖cDNA単離に関する研究」も行なっており、非常に多岐に渡った基礎研究をされています。薬の開発も行ないながらも、こうした地に足の着いた研究を続けている点で、非常に尊敬できる先生だと思います。

まとめ

基礎から応用まで、を体現している稀有な研究者の一人である、本庶佑先生。ノーベル賞を受賞されてもなお、現役の姿勢でラボを続けることでしょう。今後のPD-1抗体の進化も注目していきたいですね。

参考
京都大学大学院医学系研究科 免疫ゲノム医学HP
脚光を浴びる新たな「がん免疫療法」:小野薬品のオプジーボ-京都大学・本庶佑研究室が開発をけん引