あーてぃちょーくのおんせんブログ

心が叫びたがってるんだ。 8点/10点

遅ればせながら『心が叫びたがってるんだ。』、通称「ここさけ」を観に行ってきました。この作品、本当にこのタイトルがすべてを物語っている。アニメあの花」のスタッフが再集結し、再び秩父を主な舞台とし、高校生の青春を描く群像劇。あることがきっかけで幼い時に声を失ったヒロイン、成瀬順(水瀬いのり)がクラスメイトたちとミュージカルを作り上げていくことになり、周りとの交流や恋を通して声を取り戻していくさまを描く。...

卵のキャラクターが出てきて幼少のヒロインに声が出なくなる魔法をかけるのですが、こうした作品でファンタジー要素が入ると物語に説得力がなくなるのが常です。しかしそこはあの花でもファンタジーと感動を両立させた制作陣、ファンタジーの要素は最低限に抑え、しっかりとドラマを見せてくれます

あの花でも何角関係かあったが、この作品でも二重三重の関係が出てくる。僕は心を閉ざしたヒロインが主人公の男の子に出会ってだんだん心を開いていく物語だと勝手に思っていたので、いささか意外というか、見ていて「えっ、そっちの方向なの!?」と若干ソワソワしながら追っていました。ただ、主人公たちがもつ、「本当の気持ちを伝えたいのに、表に出せない」という悩みはおそらく誰もが共通してもつものだろう。自分の気持ちを伝えないことで生じる誤解、後悔がないように自らの思いを相手に伝えることの大切さ、そしてそれを受け止めること、こうしたメッセージが分かりやすく描かれる。

作画は納得のA-1 Pictures、声優も役によく合っていたと思う。高校生の青春を描いているが、セリフなどは日常的というよりもむしろ大変ドラマチックであり、2時間の映画にまとめるのには効果的であった。主題歌の乃木坂46の曲も映画の内容にマッチしていて余韻が良かった。

残念だったのは、ミュージカルの最後の曲。ヒロインのアイデアから2つの歌詞を重ねて同じメロディで歌うのだが、それぞれの歌詞が全く聞き取れなかった。これでは感動のシーンもポカーンである。僕は聖徳太子ではない。欲張らずに1つに絞るか歌詞を表示させる等の工夫が必要だった。

美しいクラシックの旋律にのせて青春の思いと思いがぶつかり合う本作、見る人それぞれの受け取り方ができる作品です。