007 スペクター 9点/10点

2015年のビッグネームの一つ、007シリーズの最新作を鑑賞した。その名は「スペクター SPECTRE」。この名を聞いてピンと来る人は007シリーズのファンであろう。ショーン・コネリー版007で何度か登場し、著作権の問題から行方をくらませた犯罪組織、それがスペクターである。...

 

組織を束ねる首領ブロフェルドはペルシャ猫をこよなく愛しており、整形をしている設定のため複数の俳優が演じてきた。膝の上で白いペルシャ猫を手なづけている彼、といえば分かる方もいるかもしれない。

さて、このスペクター。結論から言ってしまうととても楽しめた。だがそれは、制作費の贅を尽くしたアクション、Qが開発したアストンマーチンやオメガといった高級アイテムの活躍、美しく妖艶な2人のボンドガールとの共演、といったスペクタクルとして楽しめたということで、何か考えさせられるということではない。

前作のスカイフォールが出色の出来だったのは、ボンドの内面を揺すぶる思想犯が相手だったからだ。そしてMの死が彼に与える悲壮が我々に訴えかけた。007らしからぬシリアスで上質なドラマがスカイフォールにはあった。

スペクターにはこの要素が少ないのが残念だ。全体が素晴らしいクオリティなだけに少しの味付けを欲張りたくなる。実際今作ではボンドの過去に迫っており、そうだったのかという内容もあった。また宿敵ブロフェルドはボンドを狼狽させるまで追い詰めるが彼は思想犯ではない。情報を集めて売るという、言ってしまえばただそれだけの監視マニアだったのだ。どうしても前作と比べてしまうのがシリーズ物の宿命であり、あと一歩及ばずというのが正直な感想だ。

ただし面白くないとは一言も言っていないダニエル・クレイグは相変わらずカッコいいし、シリーズ最高額を投じたと言われるのも納得で、アクションや爆発シーンはお腹いっぱい。前作で新しくMに就任したレイフ・ファインズ、Q役のベン・ウィショー、マネー・ペニーを演じるナオミ・ハリスといった脇役の活躍も見られる。特にQ。いつもボンドに命じられてMから隠れてビクビクしながらパソコンをいじる姿はもはやかわいい。そしてパソコン部屋から飛び出してスタンドプレーをする場面もあった。そういえばQも猫を飼っていると言っていたが、今作は何かと猫にゆかりがある。

最後の「日本語字幕戸田奈津子」で余韻もバッチリの本作、迫力を楽しめる劇場で見ておいたほうが良いだろう。